アレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、通年性アレルギー性鼻炎、花粉症、アレ
ルギー性結膜炎、食物アレルギー、蕁麻疹など)

アレルギー科について

アレルギー専門医とは

アレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、通年性アレルギー性鼻炎、花粉症、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、蕁麻疹やアナフィラキシー、薬物アレルギーなど)に強い関心と専門知識を持ち、アレルギー臨床経験と実績があり、高い水準でアレルギー疾患の診療を行う能力のある医師のことです。

気管支喘息(成人)

気管支喘息とは、息をする時の空気の通り道(気道)に、慢性の炎症がおき、そのために気道がせまくなり(気道狭窄)、繰り返し咳や、ゼ―ゼーヒューヒュー音がする喘鳴、呼吸困難が生じる呼吸器系の病気です。この気道狭窄は、自然に、あるいは治療により、元の状態に戻りますが(可逆性と言います)、治療をせずに放置すると、あるいは自己判断で治療を中断すると、繰り返し起きる炎症により、気道の構造が変化し(リモデリングと言います)、元の状態に戻らなくなってしまいます(非可逆性)。そうなると、喘息症状はより起きやすく、より重くなるので、早めに適切な診断を受け、早く治療を始めるべきです。

気管支喘息の慢性炎症は、好酸球やリンパ球、マスト細胞などの白血球と、気道を構成する細胞(気道上皮細胞や平滑筋細胞など)が関係して、さまざまな原因物質(アレルゲン)や環境変化に対し、過敏に反応するようになります(これを気道過敏性と言います)。アレルゲンには、ダニやハウスダスト、イヌやネコなどの動物のフケや毛など、さまざまありますので、これらに対し、アレルギー反応があるかを調べるIgE抗体検査があります。しかし、アレルゲンが分からない場合や、気候などの環境変化、ストレスやアルコールなどでも生じ、喘息の原因は複雑ですので、お気軽にご相談ください。

気管支喘息の治療
気管支喘息の慢性炎症に対し、吸入ステロイド薬が最も効果があり、最初に用いる主軸の薬になります。吸入薬ですので、吸入器具を正しく用い、効果的な吸入を行う必要があります。気道狭窄に対し、さまざまな気管支拡張薬も用いますが、必ず、吸入ステロイド薬とともに使用し、単独で用いてはいけません。不明な点は、ご相談ください。

気管支喘息(小児)

喘息は、ゼイゼイ、ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)と呼吸困難(呼吸が苦しい感じ)を繰り返す病気です。

ヒトの空気の通り道は気道と呼ばれ、上から順に鼻と口、咽頭と喉頭(のどと首のあたり)、気管と気管支(胸の中にある管)、そして、ガス交換する肺胞があります。気管支喘息は、この気管支の内側の粘膜で、分泌物(痰、たん)が増えるとともに、粘膜を囲む筋肉が縮むために空気の通り道が狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。狭い気道を空気が通るため、ゼイゼイやヒューヒューという音がします。このゼイゼイして苦しい状態を喘息発作と呼びます。ひどい喘息発作は、アレルギー反応やかぜのウイルスが原因で起きますが、喘息発作がないときでも気管支粘膜には、様々な異常が残っていて(右の図参照)、運動や冷たい空気などの刺激で喘息発作が起きやすくなっています。これを慢性気道炎症による気道過敏性亢進と呼びます。
喘息の治療は、苦しい呼吸を楽にする発作治療だけでなく、慢性気道炎症を改善する治療、(これを長期管理と呼びます)、が欠かせません。長期管理を行うことで、重症な喘息発作で入院する子供の数は劇的に減りました。

咳が長引いたり、ゼイゼイを繰り返している幼児や、運動時にゼイゼイして息切れが激しい小学生は、喘息かもしれません。是非ご相談ください。

蕁麻疹(じんましん)

蕁麻疹とは、皮膚の一部が突然赤く膨らみ、数時間から、長くても1日くらいで消えてしまうことを繰り返す病気です。多くは強い痒みを伴い、体のあちこちに同じ様な症状を繰り返します。蚊に刺されたときの様な赤い膨らみが典型的ですが、膨らみが強い場合はその部分が白く見え、周囲に赤みを伴います。大きさは、小豆粒くらいから鶏の卵くらいの大きさのものまで様々で、中には粟粒くらいの小さなものがたくさん現れるものや、多数の膨らみが癒合して手のひらくらい、あるいはもっと大きな赤い膨らみとなるものまで様々です。蕁麻疹と混同されやすい湿疹(しっしん)は、表面がかさかさしたり、何日も同じところに症状が続きますが、蕁麻疹は形や大きさにかかわらず、膨らみが消えた後は全く跡が残らないことが特長です。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、かゆい湿疹が皮膚に繰り返し起こる病気です。目のまわり、耳のまわり、首、肘や膝のくぼみなど関節の曲げ伸ばしをしているところによくできます。かゆいためにかき壊しが続くと、どんどん発疹が拡大し、ひどくなります。皮膚の弱い体質といいますか皮膚のバリア機構が不十分な人に発症する皮膚の病気です。そのあたりは喘息と似ています。
ですから、バリアの働きを補うためのスキンケア、皮膚の炎症を抑えるためにステロイド外用薬やタクロリムス外用薬、かゆみを軽減させる抗ヒスタミン薬内服、かゆみをひどくさせるような原因に対する環境整備・対策が治療の基本となります。
幼小児の12%程度と頻度の高い疾患ですが、患者さんの80%は軽症、15%が中等症、5%が重症・最重症に分布します。80%は5歳までに自然軽快しますが、軽快しないで持続しながら悪化するタイプ、いったん軽快しても思春期頃に再発重症化するタイプなど経過には個人差があります。

食物アレルギー

食物によって,蕁麻疹、湿疹、嘔吐,下痢、咳、ゼーゼー(喘鳴)などの症状が,免疫を介して引き起こされる疾患です。皮膚,呼吸器,循環器,消化器など複数の臓器に症状が出現するとアナフィラキシーと呼びます。時に血圧低下や意識障害など生命をおびやかす危険な状態にいたることもあります。

アレルギー症状の原因となる食物は,食物アレルゲンと呼ばれ本体は食物中のたんぱく質です。原因食物は,0歳では鶏卵,牛乳,小麦の順で多く3品目で全体の9割を占めます。1歳以は降鶏卵と牛乳の頻度は急速に漸減し,学童期では甲殻類,果物類が問題となります。

食物アレルギーは,病型によって発症年齢、原因となり易い食物の種類、食べても症状が出なくなる耐性獲得の可能性、アナフィラキシーショックのリスクなどに違いがあります。

食物で症状が出ても,免疫が関与していない場合は食物アレルギーではありません。多くの食物アレルギーは,IgE抗体と食物アレルゲンが反応して症状が誘発されます。食物を摂取して2時間以内に症状が出現する場合を便宜的に即時型,それ以降の場合を非即時型としています。

食物経口負荷試験は,食物アレルギーの最も確実な診断法で,原因食物の判定や除去の解除を目的として実施されます。食物アレルギーの経過や検査データを参考に,リスクを評価して適応が決定されます。

食物アレルギーへの対応は,適切なアレルゲン診断を受け,最小限の除去を正確に行って,安全を確保しながら,必要な栄養を摂取して豊かな食生活を保つことが基本です。

食物アレルギーは,症状の出かたや重症度に個人差があり,原因となる食物アレルゲンの種類,量,品目数,耐性獲得の時期なども人により異なります。医療機関で診察や検査を受け,医学的な根拠に基づいた治療に取り組んでいただくことが大切です。

薬物アレルギー

薬物アレルギーとは、ある特定の薬物に対する過剰な免疫反応で、それによって自らの体を傷つけてしまいます。

薬物アレルギーを起こす免疫反応のタイプには幾つかあり、IgEやIgGなどの抗体が関与するもの、補体の活性化によるもの、リンパ球などの細胞が中心となって起こるものなどがあります。

薬物アレルギーの多くは内服薬や注射薬によって起こりますが、湿布や塗り薬、点眼薬、吸入薬も原因になります。

原因の薬剤を中止すればすぐに治る軽いものから、高熱、全身の皮膚や粘膜の症状が広がって多臓器障害にも及ぶ重いものまであります。皮膚症状として現れることが多いため、皮膚症状がある場合は薬疹(アレルギー性薬疹)とも呼ばれ、蕁麻疹、紅斑、水疱、紫斑、膿疱、びらんなど実に多彩です。その他の臓器障害として、1)肝障害 2)腎障害 3)血液障害 4)肺障害などが多くみとめられます。

症状の出方には、大きく2つのタイプがあり、投与直後か数時間以内に発症するタイプ(即時型)と、半日以上たってから発症するタイプ(遅延型)に分けられます。いずれのタイプも、命を脅かす重篤なものがあり、特に即時型のアナフィラキシーショックは、蕁麻疹や呼吸困難や意識低下、血圧低下が分単位で進行しますので危険です。遅延型の重症薬疹については他項参照ください。

治療の原則は、原因薬物を見つけだし、それを中止し避けることです。一度アレルギーを起こした薬剤が再び投与されると、初回よりも重症化する恐れがあります。 初めは軽症にみえても重篤化することがありますので、薬物アレルギーが疑われる場合は、アレルギー専門医にご相談しましょう。

アナフィラキシー

食物、ハチ毒、薬物、ラテックスなどによるアレルギー反応によりじんましんなどの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状が複数の臓器に同時にあるいは急激に出現することをアナフィラキシーと言います。血圧の低下を伴い意識レベルの低下(呼びかけに反応しない)や脱力を来すような場合をアナフィラキシーショックと呼び、直ちに対応しないと生命に関わる危険な状態になることがあります。アナフィラキシーで気を付けなければいけないのは、一度おさまった症状が数時間後に再発する場合があることです。アナフィラキシーが起こったら直ちに救急車で医療機関に行ってください。救急車が到着するまでの応急処置として、アドレナリン自己注射液(エピペン)を持っている場合は、直ちに太もも外側の筋肉内に注射してください。なお、過去にアナフィラキシーを経験された方は、エピペン®を処方してもらい、いつ、どこでもアナフィラキシーの起きたときに使用できるよう、常に携行しておく必要があります。

エピペン®

アナフィラキシーとは、食物、ハチ毒、薬物、ラテックスなどにより短時間に全身、複数の臓器に出現する激しい急性のアレルギー反応です。さらに、血圧が低下して意識障害(呼びかけに反応しない)を生じ、生命を脅かす危険な状態(アナフィラキシーショック)になることがあります。エピペンは、上記のアナフィラキシーがあらわれたときに使用し、医師の治療を受けるまでの間、症状の進行を一時的に緩和し、アナフィラキシーショックを防ぐための補助治療剤(アドレナリン自己注射薬)です。あくまでも補助治療剤なので、アナフィラキシーを根本的に治療するものではありません。エピペン注射後は直ちに医師による診療を受ける必要があります。現在までにアナフィラキシーを繰り返し起こしている場合、微量のアレルゲン(アレルギーを起こす原因物質)でアナフィラキシーが誘発される場合など、アナフィラキシーの発現リスクが高い方は、エピペンを処方してもらい、いつでも使用できるように、常に携行しておく必要があります。

舌下免疫療法

減感作療法とは、アレルギーの原因物質を含んだ医療用の注射液をアレルギー反応が生じないかを見ながら、安全な低濃度から徐々に量を増やし、体質改善する方法です。
舌下免疫療法の方法と利点
スギ花粉症に対する舌下免疫療法は、あらかじめ、花粉飛散前に治療を開始し、症状を出にくくするものです。従って、治療の開始は花粉症の症状が出てからでなく、数ヶ月以上前から行う予防的なものとなります。

投与方法は、スギ花粉やダニを含む錠剤を舌下に含み、1分間保持した後に飲み込みます。最初の2週間で投与量を増やしていき、3週目からは同量の薬を毎日舌下投与します。1回目の舌下投与は医療機関で行いますが、通常それ以降は毎日自宅で行なえます。これを、3~5年間続けることになります。

舌下免疫療法では、初年度より2年目、2年目より3年目以降で効果が高くなるので、3~5年間続けることが望ましいと考えられています。完全に治る割合は20%程度で、とても改善が約30%、改善が約30%となり、おおよそ80%の患者さんで有効となります。重症の気管支喘息、妊娠中、授乳中、悪性腫瘍治療中の患者さんは行うことが出来ません。