みみはなのどの病気について

耳鼻咽喉科について

耳鼻咽喉科専門医とは

耳、鼻・副鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、唾液腺・甲状腺など頭頸部領域の病気をはじめとしてアレルギー、めまい、顔面麻痺、いびき、声とことばや飲み込みの異常などについて、専門的な知識と技術を持って適切な診療を行い、必要に応じて他の診療科との連携や紹介が的確に行える医師です。

耳ときこえ

ヒトにとって音を聞く、聴覚は大切な感覚のひとつです。耳は、耳の穴から鼓膜までの「外耳」、伝わってきた小さな音を鼓膜で受け止めて、小さな骨(耳小骨)を介して内耳へ伝える「中耳」、音を神経の信号に変換する蝸牛(かぎゅう)と三半規管がある「内耳」の3つに分かれています。音が聞こえにくくなることを難聴と呼びますが、難聴の症状もどの部位が障害されているかによって異なっています。外耳・中耳の障害によって音が小さく聞こえる難聴が「伝音(でんおん)難聴」です。蝸牛が障害されると音が聞こえない・音がひずむなどの症状がでます。これが「内耳性(ないじせい)難聴」です。内耳より奥の聴こえに関係する神経が原因となる「後迷路性(こうめいろせい)難聴」は、音がきこえるけれども言葉が聞き取れないという特徴があります。「内耳性難聴」と「後迷路性難聴」をあわせて「感音(かんおん)難聴」と呼びます。耳の病気といっても原因や症状は様々です。

めまい

「めまい」にはさまざまな症状が含まれます。天井がぐるぐる回る回転性めまいや頭がふらふらする動揺性めまい、また眼の前が真っ暗になる立ちくらみなどがあります。めまいを起こす病気は大変種類が多く、内耳(ないじ)の病気や脳の病気などがあり、中には緊急を要するものもあります。私たちの身体には姿勢のバランスを保つ機能が備わっています。その機能をつかさどる場所の一つが耳の中にある三半規管(さんはんきかん)と前庭(ぜんてい)[耳石器(じせきき)]です。これらの機能に異常を来すとめまいが起きます。三半規管と前庭の隣には、聞こえに関係した蝸牛(かぎゅう)があるので、めまいと難聴は同時に起こりがちです。

鼻の内部を鼻腔といいます。鼻腔は、中央にある鼻中隔と呼ばれる仕切りで左右に分かれ、その外壁には鼻甲介という3つの高まりがあるので凹凸のあるトンネルになっています。鼻腔周囲の顔の骨には副鼻腔という空洞があり、鼻腔と交通しています。副鼻腔は、額の裏側にある前頭洞(ぜんとうどう)、両眼の間にある篩骨洞(しこつどう)、頬の裏側にある上顎洞(じょうがくどう)、鼻の奥のほうにある蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)と名前がついていて、それぞれ左右一対あります。鼻腔の内側は粘膜で覆われており、粘膜表面にはごく短い線毛が密生しています。鼻のなかに入ってきた小さなゴミは、線毛の上の粘液層でとらえられ、線毛の働きでのどに運ばれ、大部分は飲み込まれて排除されます。また、鼻腔の粘膜は吸い込んだ空気に湿り気と温度を与えて下気道を保護しています。鼻腔の上方部にはにおいのセンサーとなる嗅粘膜があり、においを感じる働きをしています。鼻腔は音声の共鳴腔として声の個性に関係しています。鼻腔や副鼻腔の病気には、副鼻腔炎などの炎症、花粉症などのアレルギー性鼻炎、良性や悪性の腫瘍などさまざまなものがあります。鼻汁、鼻づまり、においの障害、鼻出血などの鼻症状がある場合は、鼻腔や副鼻腔などの検査をして治療する必要があります。

口腔・咽頭

鼻、口、のど(咽頭と喉頭)はそれぞれつながっており、呼吸、嚥下(えんげ)、発声、ことばを発するなどの働きをしています。口腔には歯、歯肉、舌、頬粘膜、唾液をつくる耳下腺と顎下腺の管の出口があります。口蓋扁桃に繰り返し炎症が起きると、習慣性扁桃炎や扁桃周囲膿瘍で入院することもあります。また扁桃やアデノイドの肥大は睡眠時呼吸障害の原因ともなります。耳下腺や顎下腺などの唾液腺の病気には、ドライマウス(口腔内の乾燥)を起こすものから、良性の腫瘍やがんも認められます。

喉頭

わたしたちののどは食事の際には食べ物の通り道となり、呼吸の際には空気の通り道となります。この仕分けをしているのが喉頭(こうとう)です。喉頭は気管の入り口にある器官で、喉頭蓋(こうとうがい)や声帯(せいたい)をもっています。喉頭蓋や声帯は呼吸をしているときには開いていて、物をのみこむときには閉じて食物が喉頭や気管へ入いらないように防ぐ役目をもっています。また、声帯は、発声のときには適度な強さで閉じて、吐く息によって振動しながら声を出します。すなわち、喉頭には、呼吸をする、物をのみこむ(嚥下)、声を出す(発声)という3つの重要な働きがあります。

 喉頭炎で声帯が腫れたり、声帯にポリープができたりすると声がかれます。急性喉頭蓋炎では、物をのみこみにくくなったり呼吸が苦しくなったりします。声がかれる、物がのみこみづらい、呼吸がしづらいなどの症状があるときには、急いで耳鼻咽喉科を受診してください。

嚥下

人が物を食べるときには、まず口の中でかみ砕いてすりつぶし飲み込みやすい形にする咀嚼(そしゃく)をします。次に物を飲み込む動作である嚥下(えんげ)をします。嚥下にはプロセスがあり、第一段階で、舌などの動きで食物を口の奥へと送りこみ、第二段階で、のどに入ってきた食物をのみこみます。第二段階で、いったんのみこみが始まると自分で止めることはできません。第一段階を嚥下の口腔期(こうくうき)、第二段階を嚥下の咽頭期(いんとうき)といいます。第三段階は食道に食物が入ってからで、嚥下の食道期(しょくどうき)とよびます。

 物をうまくのみこめない状態を嚥下障害(えんげしょうがい)といいますが、口腔期、咽頭期、食道期のいずれの異常でも起こります。とくに咽頭期の異常では、食物が気管の中に入って誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こすことがあり注意が必要です。嚥下には、口、咽頭、喉頭が関係しますので、嚥下障害の診断や治療が必要な場合には耳鼻咽喉科を受診してください。
咀嚼(そしゃく) によって飲み込みやすい形に整えられた食物のかたまり(食塊:しょくかい)は舌やほほによって後方へと運ばれ咽頭へ送りこまれます。そののち自動的に嚥下の咽頭期(いんとうき)が起こり、食塊は食道へ入っていきます。

音声・言語

人間のもっとも人間らしい行動のひとつとして言語(げんご:ことば)の使用があります。人間はことばを使って周囲の人と意志の疎通を図り、また互いに助け合うことができます。耳鼻咽喉科では、話しことばのもととなる音声(声:こえ)を生みだす喉頭 (こうとう)と、ことばの発音に関係する器官(構音器官:こうおんきかん)である咽頭(いんとう)、 口腔(こうくう)、鼻腔(びくう)などの病気も対象としています。

 ことばの使い方は、生まれてからの学習によって身についていくものです。
聴こえが悪かったり、構音器官に生まれつきの障害があると、ことばの発達が順調に進まない可能性があります。耳鼻咽喉科医は、このようなことばの発達の遅れの予防や対策にも力を入れています。 生まれた後で病気になり、ことばが話しにくくなることもあり、この場合も耳鼻咽喉科で診察を受けていただきたいと思います。
声を出すこともほかの人と意志の疎通を図るのにたいへん重要で、とりわけ歌を歌うことは人に喜びを与えたり、感情を呼び起こしたりします。声は喉頭にある声帯(せいたい)の部分でつくられます。声帯に病気があると、自分が思うような声で歌うことができなくなるだけでなく、話しもしずらくなり、他の人との会話に積極的に参加できなくなることもあります。
話しことばや声に異常がある時は、ぜひ耳鼻咽喉科医を受診してください。

肺から送り出された空気が声帯を振動させて声を出します(発声)。声帯は声の音程を変化させます。舌、軟口蓋、口唇、頬、歯などが、鼻腔、口腔、咽頭の形を変化させて、母音や子音、言葉を作ります(構音)。

頭頸部腫瘍

耳鼻咽喉科医の専門は、耳、鼻、のどの病気であると一般の方は考えられていますが、実は、脳より下の頭部、首より上の頸部にできる色々な病気も守備範囲です。特にこの範囲の手術を行う専門分野を頭頸部外科と呼びます。頭頸部腫瘍で頻度の多いものには、喉頭(こうとう)がん、咽頭(いんとう)がん、口腔(こうくう)がんなどがあります。上顎洞(じょうがくどう)という副鼻腔(ふくびくう)にできる上顎がん、唾液(だえき)を出す器官である耳下腺(じかせん)や顎下腺(がっかせん)にできる腫瘍、身体の代謝に大事なホルモンを分泌する甲状腺(こうじょうせん)や副甲状腺(ふくこうじょうせん)にできる腫瘍も、頭頸部外科で扱っている範囲です。

皆さんが一番心配な頭頸部領域の悪性腫瘍に対しては、専門的治療を行っている施設では、頭頸部癌取り扱い規約に基づいて、病期分類や組織学的分類に応じた集学的(しゅうがくてき)治療(手術療法、化学療法、放射線療法、免疫療法などを総合的に組み合わせた治療)を行っています。進行癌症例、高齢者や合併症を有するリスクの高い患者さんにおいても詳しい検討をして、根治手術を行って確実にがんを摘出しています。腫瘍の摘出を確実にするためには、大きな腫瘍では拡大手術が必要となりますが、摘出したあとの欠損部に対しても有茎筋皮弁(ゆうけいきんひべん)あるいは遊離皮弁(ゆうりひべん)を用いて再建手術を行い、術後の形態や機能を保つようにしています。このような手術と他の治療法をうまく組み合わせることにより、患者さんの治療後の生活の質を保ち長生きしていただくように心がけています。何か気掛かりなことがありましたら、出来るだけ早く受診をしてください。